
「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」を解説【レトロゲーム解説】
『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』(以下『MGS V: TPP』)は、2015年にコナミよりリリースされたアクション・ステルスゲームです。
長きにわたって続いた「メタルギア」シリーズのうち、ビッグ・ボスと呼ばれる伝説的な兵士の過去と、戦いの原点を描く作品です。
本作では、従来のシリーズにはなかったオープンワールドを導入し、広大なマップで自由度の高いミッションをプレイヤーに提供しました。
また、小島秀夫監督が制作した最後のMGS作品であることから、物語の完結と制作の背景は大きな話題を呼びました。
本記事では、シリーズにとって重要な位置を占める本作の魅力やシステム、メッセージを、ファン視点で掘り下げます。
1. ゲーム概要

『MGS V: TPP』は、シリーズ作品である『METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES』の直接的な続編であり、1975年から1984年の冷戦時代を舞台にしています。
プレイヤーは、主人公ビッグ・ボス(ヴェノム・スネーク)として、崩壊したマザーベースと仲間の仇を討つための復讐の旅に出ます。
本作の世界観は、アフガニスタンやアフリカの戦場を広大に再現しており、軍事活動が絶えない戦場での戦闘や潜入が中心です。
■基本情報
・発売日:2015年9月1日・対応機種:PlayStation 3、PlayStation 4、Xbox 360、Xbox One、PC
・ジャンル:ステルスアクション(オープンワールド)
・開発元:コナミデジタルエンタテインメント
・プレイヤー数:1人(オンライン要素あり)
2. プロローグ:「GROUND ZEROES」

『MGS V: TPP』のプロローグにあたる『GROUND ZEROES』は、1975年のキューバにおけるアメリカ軍基地「キャンプ・オメガ」への潜入作戦が描かれています。
このミッションで、ビッグ・ボスは仲間のチコとパスを救出しようとしますが、彼の行動は敵の巧妙な罠にはまり、悲劇的な結末を迎えます。
基地襲撃後にヘリが撃墜され、ビッグ・ボスは致命的な負傷を負い、長い昏睡状態に陥ります。
『GROUND ZEROES』のシンプルなミッション構成ながら、緻密なステルスアクションを堪能できるプロローグ部分は、プレイヤーに大きな衝撃を与えました。
これを受け、『MGS V: TPP』本編では、その事件の9年後、1984年に目覚めたスネークが、かつての仲間カズヒラ・ミラーと共に復讐を果たす物語が本格的に展開されます。
3. 主要キャラクター

本作のストーリーには、シリーズおなじみのキャラクターに加えて、新しいキャラクターも多く登場します。
いずれも物語を深める重要な役割を担い、プレイヤーの選択や行動にも影響を与えます。
1.ビッグ・ボス(ヴェノム・スネーク)

本作の主人公で、9年間の昏睡から目覚め、基地崩壊と仲間の仇を討つため戦場に戻ります。
彼の復讐への思いは物語を進行する原動力であり、冷徹さを増していく彼の姿にはプレイヤーも複雑な感情を抱くことになります。
2.カズヒラ・ミラー

ビッグ・ボスの盟友であり、組織の共同設立者。
マザーベースの再建と復讐に燃えるミラーは、仲間への信頼や正義感が強いキャラクターであり、スネークに多くの助言を与えます。
3.スカルフェイス

本作の主要な敵であり、謎めいた存在。
ビッグ・ボスの仲間や基地を破壊し、冷酷な行動でスネークに復讐の道を選ばせるきっかけを作った人物です。
4.クワイエット

寡黙なスナイパーで、スネークのバディ(パートナー)として登場します。
過去に敵対していたものの、ある事件をきっかけにスネークと共に戦うことになります。
彼女の静かな強さや独特な立ち位置が、多くのプレイヤーの心を掴みました。
5.オセロット

スネークと長い因縁を持つ男で、マザーベースの補佐役として物語に深く関わります。
シリーズにおける象徴的なキャラクターでもあり、スネークとの複雑な友情と対立が描かれます。
4. ストーリーと背景

本作のストーリーは、スネークが昏睡から目覚めた1984年から始まります。
復讐と正義のために立ち上がったスネークは、新たな組織「ダイヤモンド・ドッグズ」を設立し、破壊されたマザーベースを再建していきます。
プレイヤーは広大なアフガニスタンとアフリカの戦場を巡り、さまざまなミッションを遂行しながら、謎の敵「サイファー」や「スカルフェイス」の陰謀に迫ります。
■物語の進行とミッション構成
本作はオープンワールドを採用したことで、プレイヤーは自由な順序でミッションに挑むことができ、またサイドミッションも多数用意されています。こうした自由度があるため、プレイヤーは自らの判断でストーリーを進め、スネークとしての成長や変化を体験できます。
5. ゲームシステムと特徴

1.オープンワールドステルスアクション
『MGS V: TPP』では、オープンワールド環境が導入され、広大なマップ内で多様な戦術を取れるようになっています。アフガニスタンとアフリカのエリアは昼夜や天候も変化し、状況に応じて最適な行動を選ぶことが要求されます。
例えば夜間には視界が制限されるため、敵に見つかりにくい一方、プレイヤーの視界も悪化するため緊張感が増します。
2.ミッションごとの自由度と戦術
プレイヤーは各ミッションで自由な戦術を選択でき、隠密行動や正面突破などプレイスタイルに応じた攻略が可能です。また、基地を再建するための資源集めや捕虜救出など、プレイヤーの行動が物語の進行やマザーベースの強化に直結するシステムも備わっています。
6. オープンワールドの革新

『MGS V: TPP』のオープンワールドは、プレイヤーに多くの選択肢と自由を与える点で革新的でした。
広大なフィールドは、複雑な地形や建物、警備体制を持つ敵拠点が点在し、どのように攻略するかはプレイヤーの判断に委ねられます。
この世界では戦闘以外に、情報収集や現地調達が重要で、プレイヤーは戦場の「一兵士」として、環境に適応しなければなりません。
■昼夜サイクルと天候システム
ゲーム内の時間はリアルタイムで流れ、昼夜が交互に訪れます。夜間には敵の警戒度が下がり、プレイヤーは見つかりにくくなるため、夜間を狙った隠密行動が有利になる一方、視界が悪くなるリスクもあります。
さらに、砂嵐や雨天など天候も変化し、天候に応じて戦略を柔軟に変えることが求められます。
7. フルトン回収システムとマザーベース

フルトン回収システムは単なるゲーム内の「収集要素」以上に、プレイヤーに戦術的な広がりを提供します。
例えば、敵兵士を無力化してフルトン回収でマザーベースに送ることで、その兵士が後に味方として役立つことがあります。
回収した人材は、基地の戦闘部隊、諜報部隊、支援部隊、医療部隊などの各分野で任務に就き、スネークのミッション遂行やマザーベースの成長を支えます。
これにより、戦場での行動がダイレクトに組織の拡大と強化に結びつき、プレイヤーに「基地を作り上げる」という達成感をもたらします。
■マザーベースの成長
『MGS V: TPP』では、マザーベースの運営がストーリー進行とゲームシステムに密接に関わります。
マザーベースは、最初は小規模な施設から始まりますが、フルトンでの資源・人材確保により拡大します。
特に、「開発班」は新たな武器や装備の開発を担当し、スネークの装備強化が行われます。
また、医療班や諜報班などが充実することで、プレイヤーのミッション遂行が有利に進むようになり、ゲーム全体のテンポや難易度に影響を与えます。
このように、マザーベースの成長がプレイヤーにとっての「拠点」としての重要な意味を持ち、基地を育成する楽しさが、シリーズに新たなゲーム性を加えています。
8. バディシステムと仲間

『MGS V: TPP』には、クワイエットや犬のDD(ダイヤモンド・ドッグ)といった「バディ」システムが導入され、プレイヤーの行動に様々な支援を提供します。
バディは一緒にミッションを遂行できる仲間として行動し、スネークにとって強力なサポート役となります。
1.クワイエット
クワイエットは、「沈黙のスナイパー」として知られる女性兵士で、無口でほとんど言葉を発しませんが、バディとして行動するとその実力を発揮します。
彼女は遠距離から敵を狙撃してくれるため、ステルスミッションや敵拠点の警戒を一掃したいときに大きな戦力になります。
クワイエットのスナイパー能力やカスタマイズ可能な装備は、プレイヤーに多彩な戦略を提供し、戦場での緊張感を和らげる重要なパートナーです。
2.ダイヤモンド・ドッグ(DD)
DDは、子犬の頃にスネークに拾われ、訓練を受けてバディとなった犬です。
優れた嗅覚を持ち、敵兵の位置や危険なアイテムを察知する能力があり、ステルスミッションや物資調達において役立ちます。
プレイヤーが育てることで、DDは徐々に能力が向上し、マザーベースにおける家族の一員として存在感を増していきます。
バディシステムは、従来のメタルギアシリーズにはない特徴で、スネークと仲間との関係性がより深く描かれ、プレイヤーにチームでの戦闘の楽しさと信頼を感じさせる要素として大きな役割を果たしています。
9. スネークの心理的変遷とテーマ性

『MGS V: TPP』の中心テーマの一つは「復讐」と「アイデンティティの喪失」です。
ビッグ・ボスは過去に仲間と基地を失い、復讐の念に駆られて戦場に戻りますが、その道中で冷酷さや暴力性が増していく様子が描かれています。
この変化は彼の精神的な成長や葛藤を象徴し、彼が次第に「復讐」のみに突き動かされていく姿は、従来のメタルギアの「ヒーロー像」とは異なるものです。
プレイヤーはこの心理的な変遷を目の当たりにし、英雄としてのビッグ・ボスの姿から、戦争に巻き込まれ変わり果てた人物への変貌を体験します。
彼の「正義」や「敵とは何か」という疑問を通して、単純な善悪で割り切れない人間ドラマが、プレイヤーに問いかけられるのです。
10. 音楽と演出

『MGS V: TPP』では、音楽と演出がゲーム体験に重要な役割を果たしています。
メインテーマやオリジナルBGMは、シリーズ独特のスリルと緊張感を表現しており、ステルスアクション中の音楽やサウンドエフェクトがプレイヤーの没入感を高めます。
シリーズでおなじみのコンポーザー、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズの楽曲をはじめ、1980年代の名曲も多数収録され、ゲーム中に見つけたカセットテープで再生できるという斬新なアイデアも話題となりました。
このような演出は、物語のシリアスなトーンに合わせた緻密な音楽設計により、緊張感が高まり、プレイヤーにビッグ・ボスとしての戦場体験を強く印象づけます。
11. ファンからの評価と批評

『MGS V: TPP』はその革新的なゲームデザイン、自由度の高いオープンワールド、優れたステルスアクションによって高く評価され、発売後には多くの賞を受賞しました。
特に、プレイヤーが自由にアプローチを選択できるオープンワールド設計はシリーズの新たな方向性を示し、ファンからも新鮮な評価を受けました。
しかし、物語の完結部分が不完全であると感じたファンからは批判の声もありました。
特に「エピソード51」として予定されていたラストミッションが制作中止となり、スカルフェイスとの対決やダイヤモンド・ドッグズの行く末について明確な結末が示されなかった点は物議を醸しました。
この物語の未完結感は、ファンの間で多くの議論を生むと同時に、シリーズの今後に関しても注目が集まる一因となっています。
12. シリーズへの影響と考察

『MGS V: TPP』はメタルギアシリーズ全体のストーリーにおいて重要な位置を占め、ビッグ・ボスの始まりと終わりを象徴する作品です。
主人公のビッグ・ボスがどのようにして「伝説」となったのか、その過程が描かれたことで、従来のシリーズに散りばめられた謎や背景が繋がる仕組みになっています。
シリーズを通じて、ゲームプレイと物語が密接にリンクするというMGSシリーズの伝統は維持され、本作でのシステムは今後のステルスアクションゲームに多くの影響を与えました。
13. リメイクやリマスターの可能性

『MGS V: TPP』はシリーズ最新作としての完成度の高さから、現時点でリメイクの話は出ていないものの、ファンの間ではストーリーの完結を求める声もあります。
特に未収録となった「エピソード51」によるラストミッションの追加や、次世代機でのリマスターが望まれており、コナミや小島監督の今後のプロジェクトに期待が高まっています。
14. まとめ

『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』は、ビッグ・ボスの物語と共にメタルギアシリーズの新たな可能性を示した作品であり、プレイヤーに「復讐」や「自己の喪失」というテーマを通して深い問いかけを投げかけました。
オープンワールド、バディシステム、フルトン回収といった新要素により、ゲームプレイの幅が大きく広がり、自由度が高い戦術とミッションが楽しめる作品として、今もなお多くのファンに愛され続けています。